実家の食器棚を開けると、ほとんど使われていない器が眠っている。
そんな経験はないでしょうか。
お祝いのときに買った器。
親から受け継いだ器。
祖父母の家から譲り受けた器。
大切だから捨てられない。
でも、使う機会もない。
古い器をめぐる世界には、そんな器がたくさんあります。
一方で、陶磁器を取り巻く環境も変わっています。
食器の選択肢が増え、安価で大量につくられる器も身近になりました。 「
使い捨てるものではない」と分かっていても、安く買えるものが増えるほど、
一つの器を長く使う意味は見えにくくなります。
さらに、古い器を持っていても、
「これは何なのか分からない」
「価値があるのか分からない」
「誰に相談すればいいのか分からない」
という人も少なくありません。
これは、器の世界が抱えている大きな課題のひとつです。
器は残っている。
けれど、その背景を知る人が減っている。 つ
くり手が減り、産地の技術を受け継ぐ人が減り、古い器を扱う専門家も少なくなっていく。
ものが残っているのに、物語をつなぐ人がいなくなれば、
やがて価値も分からなくなってしまいます。
だから私たちは、古い器を「売る」「買う」だけではなく、
もう一度使うことに意味があると考えます。
朝食に使う。
お茶の時間に使う。
友人が来た日に使う。
特別な日を待つ必要はありません。
毎日の暮らしの中で使われれば、
器は「骨董品」から「生活道具」へ戻っていきます。
そして、使った人が次の人に、 「この器、昔から家にあったんだよ」 と話す。
そこからまた物語が始まります。 受け継ぐとは、しまっておくことではない。
使いながら、次の時代へ渡していくこと。
食器棚の奥に眠っている一枚にも、まだ次の出番があるのかもしれません。
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